August 9, 2008

untitled

 尾久からの稽古帰りの埼京線で、隣に座るタイ人女性からタイ米の匂いが香るのを、妙な懐かしい気分に浸っていくように感じて、膝の上に開いた本に視線を落としながらも、瞼の裏へ懐かしい彼の地のすがたを想像する私には、幼い頃に過ごした熱気を嗅ぎ分けたならいつでも復たそこへと辿り着けるような気がした。オデュッセウスが遠く望郷の向こうに霞んでいくイタケーを見たようにして、私は度重なる困難にも勇敢に立ち向かいながら、やがて彼の地の土を踏み締めていることだろう。

——ただいま! 私は度重なる困難にも勇敢に立ち向かってまいりました! オデュッセウスはいまやっと帰り着いたのでございます!

August 8, 2008

untitled

オペラシティアートギャラリーにて『近藤恵介展』を観る。

そして、そのついでと云う気分で、『トレース・エレメンツ——日豪の写真メディアにおける精神と記憶』展を観た。
事前に下調べをしていた訳では無いので、古橋悌二《LOVERS——永遠の恋人たち》(1994年)のキャプションを目にした時は、驚いたし興奮した。
この作品については以前より様々な媒体から知識(彼の死によって神聖視された)を得ていたが、実際に目にするのはこれが初めての事だったからだ。

なびす画廊にて『P——利部志穂展』を観る。
昨年に観た同画廊での作品と比較して、インスタレーションへの傾向をさらに強いものにしていたが、それにより扱われた素材の物質感は殊更に際立っていた。
その為に、私には最早「彫刻」と「インスタレーション」との差異が殆ど疑わしいまでに接近していると感じられた。
蓋し、初見の直観に従えば、この作品は歴然として「彫刻」である。
ただその根拠を明晰に述べる事が出来ないほどに、私は「彫刻」についてを掘り下げて再考せねばならないと云った具合に陥ったのだった。

August 7, 2008

untitled

 仕事が終わって、一度帰宅してから、自転車で漕ぎ出して近所の古書量販店へと向かい、
大江健三郎『河馬に噛まれる』(1985年)、
id.『治療塔』(1990年)、
島田雅彦『夢使い』(1989年)、
id.『愛のメエルシュトレエム』(1991年)、
id.『忘れられた帝国』(1995年)、
id.『流刑地より愛をこめて』(1995年)、
id.『内乱の予感』(1998年)、
これらを購入した。

August 5, 2008

untitled

 最近リリースされた2本のアルバム——Beck "Modern Guilt" と Primal Scream "Beautiful Future" を試聴していたら、何だか笑えてきてしまった。きっと皆な疲れているんだ。誰しもが今はこういう音楽に浸りたくなる。いかにも売れセンのポップ・ソングというのも嫌だし、かといってロック調のけれん味を欲している訳でもない。モダニズムの再来を志向するにしても、今すぐには The Beatles や Peter Ivers なんかの"王道"を聴く気分にはなれない。すぐに疲れてしまう。今年の余りに夏らしい夕立や雷の為に、北半球は一斉に夏バテを喰らっているような気がする(でもこれは、あくまで東京から世界を眺めた限りでの一方的な感想だ)。だからこんな寄り道みたいな音楽が出来上がったのだろう。3日ばかり我慢してこの2本のアルバムをヘヴィに聴き続けたら、きっと気分もすっかり良くなる予感がする。それも悪くない、何せ今はそういう気分なんだから。

August 4, 2008

untitled

 大学時代の同窓たちと顔を合わせる機会を得る。1ヶ月振りや半年振り、中には数年振りと云う人も居た。私の他は女性ばかりで、奇妙な居心地を味わったがそれは決して嫌なものでは無かった。マドンナは来なかった。この日は昼から雷が鳴っていた。窓の外のヴェランダに在るオープンなテーブルセットが雨に濡れ続けている様子は、それらがネオン光と雷光とに照り出されていた為にか、奇妙なものに見えた。
 彼女たちはそれからカッフェに場所を移して歓談を続けるようだったが、郊外に住む私は終電の事を気にして足早にその場を辞した。よくよく考えてみれば、あと30分ばかりは時間の余裕も有ったかもしれない。

August 3, 2008

untitled

有楽町へ行き、同窓のTksさんと『スカイ・クロラ』を観る。

August 2, 2008

untitled

 『ペトルーシュカ』の稽古の為に尾久へ行く。初めての通し稽古だったということもあり、当然ながら緩慢なところや退屈なところが散見される。だが、Ykt君が本作の為に用意した結末には思いのほか面白い効果が生まれていて、これを起点としながら結末までに至る過程を整理するだけでそれなりに良いものにはなるだろうという予感はしたのだ。
 それから場所を新宿へと移して、舞台美術を担当するYmtさんを交えて作品全体を通底するイメージを決定する為の打ち合わせをする。その成果からは中々良い具合の空間になりそうだという直観が働く。そう思えたら、段々と作品の完成が楽しみになってきた。私にとっては蛍光灯の効果を充分に発揮することが出来るという点でもやり甲斐は大いに有るから。