April 24, 2008

"DIRECT CONTACT VOL. 1"

 Temporary Contemporary(月島)で催された "DIRECT CONTACT VOL. 1" を観に行く。この日の演目は、木村覚氏企画の神村恵『ソロ+アルファ』と、大谷能生氏企画の大蔵雅彦『red scarf, red curtain (for violin and two electric guitars)』、杉本拓『Three speakers』、宇波拓『不在について』。
 神村恵『ソロ+アルファ』について、近年のダンス・パフォーマンスに見られる鍛えられていない身体(所謂「コドモ身体」)に対して、私は改めて否定的な感想を持たざるを得なかった。少なからず私は演劇に於ける「日常の身体」に肯定的な立場であるが、それは「演劇」と云う表現形態が備える「物語」に因り演者の身体が過度に確定記述される事への反発に由来している。ところがこのような弛緩した身体がダンス・パフォーマンスに於いて用いられると、演者の動きからは何の緊張感も生まれず、その行為(act)が観者の想像を超える事は有り得ない。それ故に、西洋的な万能主義に則った「鍛えられた身体」に対置されるべきは日常性を規範とした「弛んだ身体」では無く、その演目だけを完全に満たす為にのみ鍛え上げられた「奇形の身体」で無ければならない。確かに前者の万能性は過剰であるが、とは云え中者は作品の強度を保持する為には余りに非力なのである。
 後半の音楽企画については割愛する。まるで忍耐を酷使する修行のようだった。

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 後日、木村覚氏とこのイベントについて話す機会を得た。その際、神村恵にバレエの素養がある事——言うなれば「踊れる身体」である点——への指摘があった。が、とは云え、あの作品を観る限りに於いて私にはそれを感じる事が出来なかった。それは筋肉のみならず関節の扱いや、伴って現れてくる振る舞いの一切からはまるで緊張感と云うものが発されず、演者の行為が必然性を伴うまでに昇華されず、作品に於いて要請された身体を彼女が充分に満たしているとは思えなかったからだ。だから確かに彼女はバレエを踊れる身体であるのかもしれないが、少なからずあの作品を自立させる為の身体を持ち併せているようには見えなかった。