December 31, 2008

untitled

 帰郷する。生家に帰り着くと、居間に在る簞笥の上に彼の遺骨を納めてある骨壺が置いてある。言葉もない。当然のように悲しみも起こらず、ただ了解が残る。「ああなるほど」というような具合にしか理解は動かない。
 思い掛けず両親が残しておいてくれたらしい彼の死顔の写真をPCのディスプレイ上に見る。彼の頬の、最期の床擦れで赤く斑らになった傷が痛々しい。視線がまるで定まっていない黒い瞳と、瞼の下に覗く白目からは、やはり死体を見ている感じがする。ここに生前の彼の愛嬌は一片も残ってはいない。単に在るものが、やはり思い直すまでもなく死んでいるという感じがする。生者は死体を、死のモニュメンタルなものとしてしか見ないようである。相変わらず言葉はなく、この無関心や、この違和感のことが寧ろ興味深いのだろうと思う。