October 12, 2008

untitled

「僕はオルケストラを横切って、腰を下ろした。僕はそれまで大理石の席がこんなにも優しいものだとは、また太陽に温められた石がこんなに弾力があって柔らかいもの——ほとんど肉体のように——だとは、思ってもみなかった。(…)舞台は山並みの一部になって、まさに地平線の上にあった。その向こうには、もう空しかなかった。空にはしみ一つなかった。人間のつくったものが自然をそこなわずにいるのと同じように。ここでは何一つ衰微するものはなく、何一つ品位を汚すものはなく、何一つ威厳を失墜させるものはなかった。一面の波になって広がるこの調和あるものを前に、僕はもう限界も矛盾も感じなかった。」

[『オディール』(宮川明子訳、月曜社、2003年)=Queneau, R. "Odile" Gallimard, 1937.]