October 11, 2008

untitled

 水戸から駆け付けてくれた友人と夜の高尾山へ行く。彼との付き合いは既に10年を超えていて、言わば"腐れ縁"と云ったふうに小中高と同じ進路を共にした。然し大学は別々だったが、それでも年に何度かは交流が続いていた。気心の知れた、或いは気の置けない友人と言える。彼は相変わらずのクレイジーである。
 暗闇の高尾山で、私は山道の奥から声を聞いた。それですっかり恐ろしい気分になってしまい、「探検」と云う蛮勇を止めた。それは登山道ではなくて、地元民以外の人通りを退けるかのような、と或る閉鎖的な杣道だった。
 それから、私は彼と二人で、行き慣れた青木ヶ原樹海へと向かった。彼が私の他の友人とは異なってクレイジーなのは、こう云う発想の気軽さを易々と実行に移す為の機転に因るのだろう。兎角、それを提案した私が唖然を喰らうような気安さが有る。それで私は彼と共に、今は暗闇の樹海を目の前にしている。そして彼は、駐車場からそう離れていないような、昼間は明け透けな夜の遊歩道でと或る声を聞いた。それで私たちはすっかり縮み上がってしまった。それからほどなくして、私たちは帰路に就いた。