May 20, 2009

untitled

話題はいつしか拗れて、――やがて別れ話になった。
彼女も私も負けん気が強いものだから、お互いに立場を一歩も譲らなかった。
そして、とうとう彼女の方から口火を切った。
だから私はここぞとばかり彼女のことを責め立てた。
議論となれば結局は男が勝つのだ。
彼女の口振りは、段々とどうでもよい理由で埋め尽くされていった。
最早無意味な"勝ち負け"の理由に突き動かされて、私はより一層過激になっていく。
私は、既に彼女のことをこてんぱんにやり込めたい気分でいっぱいだった。
すると彼女は泣き出した。
泣きながらに彼女は捲し立てていた。
私は心底満足感に満たされていた。
が、それと同時に後悔の心持ちにもなった。
涙を流しながら、必死に弁解するような口調に変わった彼女はとても可愛らしかった。
私は安堵した。
それから、私は彼女の涙に救われた気がした。
彼女が泣いてくれなければ、私はどこまでも彼女の冷徹さを呪っただろうに。
これまでの彼女の素振りを思い返して、そこかしこに彼女の善意のかたちを見て取ったのだった。
私は初めて、やっと彼女の本心に触れたような気がした。
今まで恐れていて、やもすると"気遣い"と称して怖じ気付いていた私の本心を笑った。
これまで以上に彼女のことが愛しかった。
のみならず私たちは離れて、これからはもう二度と会うこともないのだから。
これからは彼女の気分を全て理解出来るのに――と思うと、残念で仕方なかった。
一方で私は愛され、その他方で私は次第に嫌われ、無下にされていくのだ。
「彼女に身を寄せると、その口は葡萄酒臭かった。」

――と云うような夢を、私は見た。