August 9, 2008

untitled

 尾久からの稽古帰りの埼京線で、隣に座るタイ人女性からタイ米の匂いが香るのを、妙な懐かしい気分に浸っていくように感じて、膝の上に開いた本に視線を落としながらも、瞼の裏へ懐かしい彼の地のすがたを想像する私には、幼い頃に過ごした熱気を嗅ぎ分けたならいつでも復たそこへと辿り着けるような気がした。オデュッセウスが遠く望郷の向こうに霞んでいくイタケーを見たようにして、私は度重なる困難にも勇敢に立ち向かいながら、やがて彼の地の土を踏み締めていることだろう。

——ただいま! 私は度重なる困難にも勇敢に立ち向かってまいりました! オデュッセウスはいまやっと帰り着いたのでございます!